自分でNASを導入しようと考えたときや、実際に使い始めたときに、私が「あれ?これってどうなんだろう?」と疑問に思ったポイントをまとめました。
NASに使うHDDは何枚あるのが良い?
NASでは、搭載するHDDの枚数によって選べる保存方式(RAID)が変わります。難しい専門用語を覚える必要はありません。まずは「何台のHDDを入れると、どんなことができるのか」を理解しておきましょう。
HDD1台の場合
シンプルに保存するだけ
- 必要なHDD:1台
例)4TB × 1台(使える容量:4TB)
特徴
- 容量を100%使える
- 設定が簡単
- HDDが故障するとデータも消える
こんな人向け
- 一時的な保存
- バックアップ先として利用
- とにかく安く始めたい
ただし、NASを導入するメリットである「データ保護」はありません。
大切な写真や仕事のデータを保存するならおすすめできません。
HDD2台の場合(初心者におすすめ)
片方が壊れてもデータを守れる
- 必要なHDD:2台
例)4TB × 2台(使える容量:4TB) - 保存方式
RAID 1 / SHR(Synology推奨) - 仕組み
2台のHDDに同じデータを保存します(イメージとしては、重要な書類を常に2部コピーして保管している状態)
メリット
- HDDが1台壊れてもデータが残る
- 復旧が簡単
- 初心者でも安心
デメリット
- 容量は最小のHDDに合わせられる
「4TBを2台入れたら8TB使える」と思われがちですが、RAID1やSHRでは2台に同じデータを保存するため、実際に利用できる容量は4TBになります。
その代わり、片方のHDDが故障してもデータは残ります。
HDD3〜4台の場合
容量と安全性を両立したい
- 必要なHDD:3台以上
例)4TB × 4台(使える容量:約12TB(RAID 5の場合)) - 保存方式
RAID 5 / SHR(Synology推奨) - 仕組み
データに加えて「復旧用情報(パリティ)」を保存します。
そのためHDDが1台故障してもデータを復元できます。
メリット
- RAID 1より容量効率が良い
- HDD1台故障に対応
- コストパフォーマンスが高い
デメリット
- 設定が少し複雑
- 復旧時に時間がかかる
家族全員の写真や動画をまとめて管理したい場合に人気です。
HDD4台以上の場合
業務用途レベルの安全性
- 必要なHDD:4台以上
例)4TB × 4台(使える容量:約8TB(RAID 6の場合)) - 保存方式
RAID 6 / SHR-2 - 仕組み
故障対策を2重化し、2台同時に故障してもデータを保護します。
メリット
- 非常に高い安全性
- 長期運用向き
- 業務用途でも利用される
デメリット
- 容量効率が下がる
- HDD本数が多く必要
SOHOや小規模企業向けの構成です。
容量を優先する方法もある
RAID 0
- 必要なHDD:2台以上
例)4TB × 2台(使える容量:8TB)
特徴
- 全容量を使える
- 非常に高速
しかし、どちらか1台が故障すると、すべてのデータが消えます。
そのため、写真や仕事のデータ保存には基本的におすすめしません。
RAIDをしていれば絶対に安全?
「HDDを2台入れてミラーリングしているから、もうデータは絶対に消えない!」と油断してしまいがちですが、ここに落とし穴があります。
結論から言うと、「RAIDは『ハードディスクの故障』には強いけれど、『間違えて自分で消しちゃった(誤削除)』や『ウイルス感染』には無力」です。
2台のHDDは常に同じ動きをしているため、パソコンから「あ、このフォルダいらない」と手動で削除してしまうと、2台のHDDから同時に、一瞬でデータが消え去ります。
- 大切なデータを守るための対策
- 間違えて消してもゴミ箱から戻せるようにNASの「ゴミ箱機能」を必ず有効にしておく
- NASの中身を定期的に自動バックアップするためNASのUSB端子に「外付けHDD」を繋いでおく
「ハードディスクが壊れたとき」と「自分が間違えて消したとき」の、両方のリスクに備えておくのが最強の安全対策です!
Synologyなら「SHR」を選べばOK
Synology製NASを利用する場合は、基本的に独自の「SHR(Synology Hybrid RAID)」を選んでおけば問題ありません。
SHRはHDDの本数に応じて最適なRAID構成を自動で作成してくれる仕組みで、
- HDD2台ならRAID 1相当
- HDD3〜4台ならRAID 5相当
- HDDが増えても最適な構成へ自動調整
といった形で運用できます。
また、一般的なRAIDと比べて容量の異なるHDDを組み合わせやすいのも特徴です。例えば、4TBと8TBのHDDを組み合わせて利用することも可能です。
さらに、後から容量を増やしやすいのもSHRの大きなメリットです。
例として…
- 導入時:2TB × 4TB → 利用可能容量 約2TB
- 片方を8TBへ交換:8TB × 4TB → 利用可能容量 約4TB
- もう片方も8TBへ交換:8TB × 8TB → 利用可能容量 約8TB
このように、一度に大容量HDDを購入しなくても、予算に合わせて少しずつ容量を増やしていくことができます。
RAIDの種類や将来の容量拡張を細かく考えなくても運用しやすいため、初心者がSynology製のNASを使うなら、まずはSHRを選ぶのがおすすめです。
ハードディスクについて
使っていない古いHDDを使ってもいい?
NASは24時間稼働や複数ユーザーからの同時アクセスを前提としているため、できればNAS専用HDDを使用することをおすすめします。
代表的なNAS向けHDDには、
- WD Red Plus
- Seagate IronWolf
- Toshiba N300
- Synology HAT3300
などがあります。これらはNAS環境向けに設計されており、一般的なデスクトップ向けHDDよりも耐久性や安定性に優れています。
もちろん、手元にある古いHDDを使ってNASを始めることも可能です。しかし、
- 使用年数が長い
- 通電時間が多い
- デスクトップ向け製品
- SMR方式のHDD
の場合は故障やトラブルのリスクが高くなります。
テスト用途やお試し運用であれば問題ありませんが、大切な写真や業務データを保存するのであれば、新品のNAS専用HDDを選ぶ方が安心です。
特に重要なのは「CMR方式」
NAS用HDDを選ぶ際は、容量や価格よりも先に「CMR方式」であることを確認しましょう。
HDDには、
- CMR(推奨)
- SMR(非推奨)
の2種類があります。
SMRは価格が安い反面、RAIDの再構築(リビルド)時に速度低下やトラブルの原因になることがあります。
NASでは長期間の安定運用が重要なため、購入前にメーカーの仕様を確認し、CMRモデルを選ぶのが基本です。
メーカーが違っても使える?
メーカーや回転数が異なるHDDを混在させることも可能ですが、運用の安定性や将来の管理を考えると、同じメーカー・同じモデルで揃える方が望ましいでしょう。
機能について
動かしたまま修理できる「ホットスワップ」って?
大規模な業務用サーバーや、今回紹介しているSynologyのような優れたNASには、「ホットスワップ」という機能が備わっています。
これは、「NASの電源をつけたまま(稼働させたまま)、壊れたハードディスクを引っこ抜いて、新しいものに交換できる」という神機能です!
わざわざシステムを停止して、ネジを外して……という面倒な作業をせず、24時間365日いつでも動き続けながらその場で修理ができるため、忙しい仕事のデータを扱っている時でも安心です。
追加備品について
M.2 SSDキャッシュって必要なの?
NASのスペック表を見たり、中級者向けのレビューを読んだりすると「M.2 SSDを搭載して高速化!」という言葉をよく目にしますよね。「これって自分も買った方がいいのかな?」と迷うポイントです。
結論から言うと、一般的な写真・動画の保存や、数人での書類共有くらいの使い方なら、M.2 SSDは「最初はまったく必要ありません」。
そもそもM.2 SSDを入れると何が変わるの?
ハードディスク(HDD)よりも圧倒的にデータの読み書きが速い「SSD」を一時保存用の場所(キャッシュ)として使うことで、NAS全体の処理スピードを底上げする仕組みです。
どんな人に必要なの?
- 10人以上の大人数で、同時に同じNASへアクセスして仕事をする
- NASの中に保存した動画を、何人も同時に再生したり直接編集したりする
- 何万枚もの写真のサムネイル(プレビュー画像)を、一瞬で爆速表示させたい
初心者はスルーしてOKな理由
Synologyの初心者向けモデル(DS223jなど)は、そもそもM.2 SSDを挿す穴がついていないものが主流です。
上位モデル(DS224+やDS723+など)を検討する場合でも、まずはHDDだけで運用してみて、「あれ?データの表示がちょっと遅くてイライラするな…」と感じてから買い足すので十分間に合います。最初は無理して予算を割く必要はありません!
急な停電対策に「UPS(無停電電源装置)」は絶対に必要?
体験談のところでも「豪雨による停電で生きた心地がしなかった」とお話ししましたが、結論から言うと、NASを長く安全に使うならUPSは「ほぼ必須」のアイテムです。
UPS(Uninterruptible Power Supply)とは、簡単に言うと「コンセントが抜けても数十分間は電気を送り続けられる、賢い巨大バッテリー」のことです。
普段は電源とNASの間に挟んで普段通り使って非常時になったときに自動で切り替わりバッテリー駆動でNASの電源が落ちることがないような仕組みを作ります。
なぜ必要なの?
NASは24時間休まず動いている小さなパソコンです。もしデータの読み書きをしている最中に突然プツンと電気が切れると、最悪の場合、ハードディスクのデータが丸ごとクラッシュしたり、NAS本体が故障したりします。
UPSがあるとどうなる?
万が一停電が起きても、UPSから電気が供給され続けます。さらに、SynologyのNASとUPSをUSBケーブルで繋いでおけば、「あ、停電したから、データが壊れないように安全にシャットダウン(電源オフ)するね!」と、NASが自動で眠りについてくれるのです。
予算はどれくらい?
初心者向けの定番メーカー(CyberPowerやAPCなど)のUPSなら、約1万〜1万5,000円前後で購入できます。 「せっかく買ったNASと大切なデータが、一瞬の雷や停電で全滅するリスク」を考えると、最初に払っておくべき最高の安心保険だと言えます。
金額について
電気代はどのくらい?
24時間つけっぱなしにするサーバーと聞くと、電気代がどんなものか気になりますよね!
SynologyのNASキット「DiskStation DS220j」の消費電力は、アクセス時で約12.46W、HDDハイバネーション(省電力)時で約5.06Wです。24時間つけっぱなしにしても、電気代は月額約250円程度と非常に省エネ設計となっています。
月に換算すると250円、年間だと約3,000円になります。月額たったの250円で、大容量のサーバーが自宅に置けるということですね!
どのくらいの期間で元が取れる?
私が当時購入した金額で計算したところ、約2年3カ月以上有料クラウドを利用するのであれば、コスト面では自宅にNASを設置した方が有利になるという結果になりました。
しかし、最近は半導体や電子部品、物流費などが全体的に上昇しています。NASは小型のコンピューターに近い製品のため、CPUやメモリなどの部品価格の影響を受けやすく、その結果として本体価格も上がっています。
そのため、現在の後継モデルである「DS223j(約4万円)」を基準に同じように計算すると、損益分岐点は約3年6カ月〜4年程度まで伸びます。
もちろん、これはあくまでストレージ容量と費用だけを単純比較した場合の話です。
NASには、
- 家族やチームでデータを簡単に共有できる
- スマホの写真を自動バックアップできる
- 複数のパソコンから同じ最新データへアクセスできる
- 自分のペースで自由に容量を拡張できる
といった、有料クラウドの一番高いプランでも真似できないメリットがたくさんあります。単純に「クラウドより安いから導入する」というよりも、「データを自分の手で、自由かつ安全に管理できる環境を作りたい人」にこそ向いている製品だと感じています。
通信について
NASの転送速度はどのくらい?
NASは「ネットワーク経由でアクセスするストレージ」なので、転送速度はHDDよりもネットワーク環境の影響を受けます。
一般的な家庭用NASでは、1Gbps(ギガビット)対応LANを利用することが多く、実際のファイル転送速度は約100〜120MB/秒程度です。
例えば、
- 写真データ(1GB) → 約10秒前後
- 動画データ(10GB) → 約1〜2分
- 100GBのバックアップ → 約15〜20分
程度が目安になります。
そのため、写真の管理や動画の保存、書類共有といった用途であれば十分実用的な速度です。
一方で、4K動画編集や大量データの頻繁なやり取りを行う場合は、2.5GbEや10GbE対応のNAS・ルーター・LAN環境を導入することでさらに高速化できます。
なお、家庭用の2ベイNASでRAID 1やSHRを利用する場合、HDDの性能よりも先に1Gbps LANの速度がボトルネックになることが多いため、初心者は転送速度を過度に気にする必要はありません。
外出先からスマホでアクセスすると通信量を大量に消費する?
外出先からスマホアプリで写真や動画を見られるのは最高に便利ですが、「毎月のスマホがパケ死するんじゃ…」と心配になりますよね。
結論から言うと、写真の閲覧やPDF・資料の確認程度なら、通常のWEBサイトを見るのと変わらないのでそこまで気にする必要はありません。
ただし、以下の操作をモバイルデータ通信(キャリア回線)のまま行うと、データ通信を激しく消費するので注意が必要です。
- 旅行中に撮った4K動画などを、外出先から何本も再生する
- 外出先で撮影した大量の写真・動画を、その場でNASへバックアップ(自動同期)する
安心対策として
専用アプリ(のちに紹介する「Synology Photos」など)の設定画面で、「Wi-Fi接続時のみアップロード(バックアップ)する」という機能をオンにしておきましょう。これだけで、外出先での意図しないデータ通信の大量消費を防ぐことができます!
自宅のインターネットが止まったらNASは使えなくなる?
「ネットワーク対応ストレージ」と聞くと、インターネットが止まったらデータにアクセスできなくなるのでは?と思うかもしれません。
結論から言うと、インターネット回線が停止しても、自宅のルーターとNASが正常に動作していれば、家の中からは問題なく利用できます。
NASは自宅のネットワーク(宅内LAN)上で動作しているため、プロバイダの障害や回線トラブルで外部との通信ができなくなっても、パソコンやスマートフォンから写真やファイルへアクセスできます。
ただし、外出先からのアクセスやクラウド同期など、インターネットを利用する機能は利用できなくなります。
一方で、Wi-Fiルーター自体が故障した場合は、家の中からもNASへ接続できなくなるため注意が必要です。
外観・置き場所について
NASってどこに置いておくのが正解?
「ルーターの近くに繋ぐ」というのは分かっても、実際の生活空間のどこに置くべきかで迷う人が多いです。
NASの中には「常に回転しているハードディスク」と「熱を逃がすための冷却ファン」が入っています。そのため、小さなノートPCがずっと動いているくらいの、「ウィーン」「カリカリカリ…」という静かな駆動音がします。
昼間は全く気になりませんが、静まり返った夜間だと少し耳に触る可能性があるため、寝室やテレビの真横に置くのは避けた方が無難です。
おすすめの置き場所
- リビングの隅にあるルーターの棚の中
- 廊下の収納スペース
- クローゼットの中
など、「風通しが良くて(熱がこもらない)、家族が寝る場所から少し離れた場所」に設置するのが良いかと思います!
